年次有給休暇の取得に関しては、職場により、個々人により、取得の頻度等は差が出るものです。
もしかしたら、休むより仕事、又は休むことに価値を覚えない人だったら、「休まなくてもいいので、そのかわりに、休暇分を給料にしてもらえませんか?」というかもしれませんよね。
実際、私も、たまに、「有給休暇を買い取ってほしいといわれているが、買い取ってあげないといけないのか?」と質問を受けることもあります。
しかし、年次有給休暇の買い取りは、原則として出来ないことになっています。
例外として、1.時効(年次有給休暇の発生から2年)で消滅する年次有給休暇の日数や、2.退職時に消滅する年次有給休暇の日数については、会社側から買い取っても問題はありませんが、これは法律上の義務ではありませんので、たとえ従業員から買い取り請求があっても、買い取る義務は無いのです。
ところで、「働き方改革関連法」が7月に成立し、来年4月1日より順次、施行されることになりました。
この法律の主な骨子に、日本では慣例化している長時間労働を是正することが挙げられているのですが、「年次有給休暇の5日強制取得」がその重要な柱として新設されました。
これは、文字どおり、従業員に対し、毎年、時季を指定して5日は年次有給休暇を取得させなければならない、というもので、来年4月1日からは、有給休暇を必ずしも取りたがらない従業員がでてきたとしても、必ず有給休暇を取得させなければならない、ということになります。
もう少し詳しく言うと、来年の4月1日以降は、10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員が、年次有給休暇の基準日(これは、各人の入社年月日や、会社の一斉付与日が決まっている等、それぞれ違います)以降1年間の年次有給休暇の取得が5日未満であれば、5日に満たない日数について、会社側で指定をして、年次有給休暇を取得させなければならないのです。
例えば、4月1日が年次有給休暇の基準日で、同日付で10日以上の年次有給休暇が付与されているAさんが、その後3日分の有給休暇を請求し取得した場合、翌年の3月31日までの1年間に5日取得を達成しないといけないので、あと2日分足りないことになりますが、Aさんがあと2日分、自発的に有給休暇を取得する見込みがなければ、今般の法改正による対応をとる(会社側から有給休暇取得の時季指定をする)こととなります。
このように従業員ごとに個別に管理するのは手がかかる、というのであれば、あらかじめ年次有給休暇の取得の時季について決めておく(「計画的付与」といいます)こともできますが、この場合は、労使の協定を結ぶ等、事前の手続きが必要です。
繰り返しになるのですが、「年次有給休暇の5日強制取得」の対象となるのは、全ての従業員ではなく、10日以上の年次有給休暇が付与されている従業員のみになります。
ちなみに、週に5日以上出勤する正社員やフルタイムの従業員であれば、入社6ヶ月経過後には10日の年次有給休暇が付与されるのは、わりとよく知られているかと思いますが、週当たりの勤務日数が少ないパートタイマーであっても、長年勤務しており、これまで年次有給休暇を請求したことがないのであれば、10日以上の年次有給休暇を持っているということは、十分あり得る話です。
年次有給休暇の買い取りは、原則として出来ません。そして、来年4月1日からは、5日分の年次有給休暇を強制的に取得させなければならなくなります。
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