給与を何分単位で計算するかについては、5分単位、30分単位など、バラエティに富んでいるのが実情ですが、15分単位で計算している会社は多いのではないでしょうか。
給与計算の単位が問題となる場面としては、次の2つに集約されると考えられます。
1.残業時間を15分単位で計算対象としている(残業時間の計算)
2.遅刻・早退など勤怠に影響がある場合、その給与の控除対象を15分単位で計算している(勤怠の控除の計算)
では、従業員を採用した際の労働契約書や、会社の労務関係に関するルールブックである就業規則に、残業時間や勤怠の控除を15分単位で計算する旨を定めても大丈夫でしょうか?
答えは×です。
どちらも、労働基準法の違反になってしまいます。
まず、①の残業時間についてです。
たとえば終業時刻が18時であり、18時25分まで残って仕事した場合、25分の残業が発生している訳ですが、15分単位の運用をすると、その人の残業は15分に縮められる(18時16分から25分までの10分は切り捨てられる)ことになります。
労働基準法では、「賃金は労働の対価」であるため、働いた分はその「全額」を対価として支払わなければならないと定められています(賃金全額払いの原則)。
上記の例でいえば、25分の残業時間を15分に丸め込むことにより、切り捨てた10分の労働の対価を支払わないこととなり、まさにこの「賃金全額払いの原則」に違反することになる訳です。
ただし、例外的に、残業時間の丸め込みができる場合もあります。
給与計算の対象となる1か月間の時間外(1日8時間を超えた時間)時間数を集計した結果、
その合計が30分未満である場合は切り捨てが可能で、30分以上の端数がある場合は1時間に切り上げて計算して良いことになっています。
1か月間の総残業時間数が10時間25分の場合は、10時間、10時間35分の場合は11時間で計算する、ということですね。
あくまでも、1日について8時間を超えた時間数の1か月合計に限り「丸め」ができることに注意してください。
日々の残業については、「丸め込み」が不可能であることは、前述のとおりです。
次に、②の勤怠の控除についてですが、こちらも、残業と同じ考え方になります。
つまり、5分だけ遅刻した人に15分に相当する給与の控除をすることによって、10分の労働の対価を支払わないことになってしまいます。
こちらに関しては、残業のように、例外は無く、「ノーワーク・ノーペイ」の考えに沿って、
実際に労働の提供が無かった部分だけを控除の対象として給与計算することになります。
ただし、注意しても遅刻が続くなど、勤務不良の場合の懲戒の策として、「減給」することは、問題のある取扱いではありません。
トラブルを防ぐため、勤務不良に対する懲戒については、就業規則に規定しておくことをお勧めします。
また、実際に減給する場合にも、会社の判断した額を減給できるのではなく、労働基準法に則った計算方法があるため、注意が必要です。
このような取り決めも、就業規則に細かく規定しておきましょう。
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