今日から平成30年度、新年度となりました。
就職や転勤、新しい事業への取り組み等、新たな変化をむかえる方が多いのではないでしょうか。人事・労務関係では、会社の手続きに伴う改正があったり、入退社の手続きが増えたりと、何かとあわただしく過ごす時期でもありますね。
ところで、採用に関連して、たまに受ける質問がこれです。
「求人の際に掲載した労働条件と、実際に雇ってからの条件を変えてもいいですか?」
この質問の大半は、実際の条件は下げても大丈夫なのか?という意味を含んでいるのですが、お答えとしては、原則として不可能と考えていただいたほうが良いです。
労働条件の明示に関して、職業安定法と労働基準法、この2つの法律の適用があります。
まず、求人の掲載については、職業安定法において、業務内容や給与、勤務時間などの労働条件を明示すべきとされています。
求職者の方々は、求人に明示された条件を、採用されたら当然受けられる条件であるとの前提で、応募して来ます。ですから、求人の条件と異なる条件(求人よりも、不利な条件)にすることは、信頼に背く行為であり、場合によっては、行政の指導対象となったり、企業イメージを大きく損ねることにもつながりかねません。やむを得ず、変更するにしても、必ず事前に説明のうえ、合意を得ることが重要です。今年1月から改定施行された職業安定法では、当初、求人で明示していた労働条件から変更を行う場合は、採用が確定するまでの間で可能な限り早めに(実際は、採用面接のとき等でしょうか)説明する必要があり、この方法については、変更前後の内容の両方を書面で提示したり、変更箇所に印や脚注を付けて変更したことを明示することを義務づけています。
次に、晴れて採用が決まり、実際に雇い入れるときです。このときは、労働契約の締結に際して労働条件を明示しなければならないと労働基準法で定められています。ここで明示する内容は、求人掲載時と同じく、業務内容、給与、勤務時間などのほか、退職・解雇に関する事由などです。
労働条件通知書のご参考はコチラ!↓(厚生労働省HP)
もしも、雇い入れ後に、明示された労働条件と実際の条件が異なる時は、雇われた人は、労働契約を即、解除できることになっています。他県から就職で転居してきた人が、労働契約を解除したために、解除の日から14日以内に再び地元に戻ることになった場合は、その旅費までも負担することになってしまいます。また、明示された労働条件が違っていたことにより損害を被ったとして、損害賠償請求される恐れも出てきます。
やむを得ず、求人に掲載した労働条件・雇い入れ時の労働条件と、実際の条件を、不利に変更せざるを得ないと判断しても、上記の法的なリスクも鑑みたうえ、変更が本当に必要なのかを今一度、検討する必要があると言えます。
ご縁があって、一緒に仕事をしていくからには、入り口である採用時点の無用なトラブルは、避けたいものですね。
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